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大きなソファに着物姿で恰幅のいい虎人間が座っているが、執行の時と同じく顔は虎で身体は人間なのでとても分かりやすい。
他の虎人間はスーツを着ていて、部屋の中には六人。
商談なのか取引かは不明だが、リーダーと失礼しましたと挨拶し部屋を出ようとした。
「いやいや、呼んだんはワシや。これからちょっと犯人探しするからバタつくやろし……」
虎人間が関西弁?!とは時代劇に出てくる浪花の商人が頭に浮かぶ。
他にも思い出したくないが、母の昔の旦那……というか父も奈良県出身で婿養子に入ったので、言葉遣いに違和感がなかった。
考え事してボーッとしてたのか、リーダーは肩を押し部屋の隅に移動しろ合図され、ハッと我に返る。
「この中に裏切者がおって、シラを切りよるから、もう殺してしまおうか思うて」
「――はぁっ?!そんな簡単に殺していいんですか?」
「そいつは会社の金かなりの額横領しとるし、命だけでは足りひんぐらいや」
でも、このオッサンは一人だけでなく五人殺そうとしてるので、何人裏切者がいるか知らないが、濡れ衣を着せられた人まで消すつもりのようだ。
「あの、会社とかよく分かりませんが……そんな簡単にバッサバッサと部下殺してるといい人材は育ちませんよ?もっと内部の監視体制や、セキュリティを強化するとか方法ないんですか?」
「小娘が生意気に……ワシは昔から信用第一で自分の目ェで判断しとる。少々のリスクは投資やと思うて…」
「アホかっ!そんな上司の下で働くの絶対に嫌じゃボケッ!どうせアレやろ、貧乏人とか馬鹿にしてるタイプやろ、金の指輪しとんのやろ?」
リーダーが後ろから肩に手を置き、親指で強く押してるので『止めろ!』と言ってるのは分かっている。
潜入捜査でクビになれば本末転倒だし、下手をすればイザリ屋の給料だって減らされるかもしれない。
感情に負けて仕事に影響するなんて、あってはならない事だ。
「な、な――んてねっ!小娘の分際で失礼しました。無礼をお許し下さい」
キセロの真似でテヘッという表情をしたが、こんな事で騙されるほど商人は甘くない。
だが金の指輪を五つ程外し、机の上に置いたオッサンは明らかに動揺していた。
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