ミルテにご指名

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誰も居なくなったのを確認し、ノビてる用心棒の足を引っ張ろうとすると、獺祭が部屋に入り大丈夫かと声を掛けてくれた。 「えぇ、何とか。ホステスさんは無事ですか?」 用心棒の顔を軽く叩いて起こしてから、あぁと返事をすると、腕組みをして考え事をしてる様子だった。 「すまんが、今日はホステスで入って貰えないか」 「――はい?」 「今日は血気盛んな客が多いし、妹に言ったらそういうの姉担当なんでと断られた。これ以上ホステスの負傷者も増やせないし、滋にも来て貰うよう頼んだ」 極道の妻みたいな気合の入った女性達の中で、ド素人がウロウロしたら、それこそシバかれそうだ。 俯いてどう断ろうか悩んでると、別に手当は出すしヘルプのヘルプだから本気で相手しなくていいと交渉される。 「なるほど……」 要はホステスというより、近くで守る用心棒としての意味合いが強そうだ。 獺祭の後をついて行くと、呼び出されたホステスさんが待機していて、ドレスを選んだりヘアメークをしてくれた。 申し訳なさそうに目を伏せているのを見ると、怪我した人、もしくは亡くなった女性の知り合いだと思われ断りづらくなる。 相当な美人だがまだ若そうだし、おまけに目が微かに赤くなってるのは、コッソリ泣いたからに違いない。 鏡を見ると少し大人びた自分にビクッとしたが、やはり化粧の力は恐ろしいと改めて思った。 木村さんや兎の世界でもメークをしてもらった事はあるが、ナチュラルメークだったので、夜メークはちょっと女優になった気分だ。 ミルテちゃん綺麗と微笑む女性だったが、貴女の方がずっと美しいと思いつつ、後ろについてフロアに出た。 ウエストに練習用の双棒は巻いてるし、すぐに取り出せるように用心もしている。 もっと散らかってるかと思ったが、何事もなかったように片付けられてるので、さすがだと感心しながらゆっくりと歩き出した。 選んでもらったドレスはノースリーブの膝上丈で、ウエストを強調した後のリボンが特徴の淡いグリーンのシフォン素材だ。 腕を出すのも久々で緊張するが、それよりもドキドキしすぎて脇汗も気になる。
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