紫陽花の花言葉

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「何言ってんの?瑠里はそんな子じゃないでしょ」 「姉さん、人って変わるんだよ。私も彼色に染まったのかも」 カウンターからホイップされたラテを持って来る彼氏に、殺気立った目を向けると、ニコッと笑って口を開いた。 「初めまして……大人の魅力漂うダンディな金持ちいっくんです!」 スローモーションで何度もリピートされ、早く目が覚めたい一心と、怒りに我を忘れ、拳を振り回しながら大声で叫んでいた。 「ぐあぁぁぁぁ!嘘つけこら――っ!」 「……りちゃん、百合ちゃん!」 肩を揺すられゆっくり目を開けると、驚いた滋さんと社長が腕や足を押さえていた。 「悪夢かの?!ワシ殴られるかと思ったわ」 「あ、いや、すいません……」 言える訳がない『お前を妹から紹介されたんだよ』なんて。 瑠里は金持ちのじじいと結婚して、家族の犠牲に……いやいや、そんな無理しなくても私だって働くからとプチパニックになりそうだった。 「百合ちゃん、通常勤務でオフ増えたでしょ?気分転換にバイトしない?」 「いや、滋さんは金刺繍なんで嫌です」 「でもシンデレラを助けたよね俺。簡単だし、気晴らしになるから」 腕組みをして口角を少し上げる滋さんに『助けて貰ったけど、それを引き合いに出すところがセコイ』と付け加えたかった。 「俺も入ってるしこっちは人数足りてるけど?」 「違うって、だから俺が頼んでるんだし」 「えっ……マジで、そっち?!」 会話内容からして、八雲さんも軽く驚きを見せたという事は、絶対に無理のあるハードな仕事だと思い断る決心が固まった。 「そんな顔しないでよ、高級クラブと言ったらまた変な顔しそうだけど要は用心棒で、揉めた時だけ仕事って考えると楽でしょ?」 「……待てや、忘れてるかもだけど一応女子ですが?」 傷ついた心に釘を打ち込まれ、上からタライを落とされた気分だ。 小刻みに揺れる啄の背中を見ると、忌々(いまいま)しい奴だと目つきが鋭くなるのが自分でも分かった。
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