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その他オーナーに関係してた人は、トップの指示によって根こそぎ処分が下されたようで、大体の想像はつくが息をしてる者は居ない気がする。
「それで獺祭がお礼も兼ねて『紫陽花』に来てと伝言貰ってる、今度祭りもあるらしいよ」
「ダリヤさんの様子見たいし、瑠里に相談してみます」
結局トップがどんな人かよく分からなかったが、猿の世界の留学の時も見てないし、私達には関係ないやと席を立った。
「瑠理ついて行ったんですよね?私は家に帰ります」
「うん、何かあったら連絡する。気をつけてね」
ドアを開けるとすっかり朝日が顔を出していて、そのおかげで暗い道を歩かなくて済んだ。
家に戻るとタタタッとドタドタが聞こえ、手土産は持ってなかったが顔がよっぽど疲れていたのか、早く寝なさいと珍しく心配された。
リビングにも入らず、自分の部屋のベッドに倒れ込むと、何も考えずゆっくり眠る事にした。
――翌日の夜。
ご飯とトイレとお風呂以外はずっと寝ていた気がする。
沢山眠ったのにまだ足りないのかと母は少し呆れた顔をしていた。
瑠里は泊まりで残業になったと伝えてるし、言い忘れた事はないかと頭の中でシュミレーションをしていると、イナリが足元でジャンプしていた。
それと同時に母の勝手な吹替が始まる。
「寂しいんだよぉ!遊んでくれよお、仕事ばっかで散歩も任せっぱなしだろ」
「休みの日にね、ちょっとお疲れモードで……」
「大人の事情なんて知るかよっ、まさか、他に女作って浮気……」
「だから、何で毎回そのパターンになるの?!私は女だし百歩譲って『男』でしょうが」
口調を荒げておにぎりに手を伸ばす。
「えっ、男できたの?」
ブッと吹き出してタオルを探した。
「人の話はちゃんと聞いてよ、そんな事は言ってない」
王子にオヤツをあげると、嬉しそうにガツガツ食べてくれ目を細めたが、割り込むようにキセロが奪おうとしたので抱えあげた。
「おい、シレッと混ざってんじゃないよ。欲しいなら下さいってお伺いたてろ」
「王子達は魔女の魔法で話せないんだよ!目と目で通じ合えばいいじゃん」
意味の分からない言葉を並べながら、アイスクリームの包みを開けていた。
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