鷹人間の眼

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「ドラム缶が乙女な事言ってるんじゃないよ、アイスは一日一個までだからね、カロリー高いんだから」 「今からの時期は老人は水分が必要だからね……」 都合がいい時だけ年寄りになるパターンもイラッとする。 オヤツは食べたが何となく王子の落ち着きがないのと、キセロが黙って見つめる視線が気にかかる。 「どうしたの?王子達まさか本当にご機嫌斜め?」 「ほぉら、私は何でも知ってるんだよ」 チョコアイスを口の端につけ、勝手な事を言っているが、仕事を頑張っているのはこの家族達を養うためだ。 「王子の為に仕事頑張ってるんだよ?みんなで温かいご飯を食べる……」 すれ違い夫婦の旦那のセリフみたいだが、パンパンとワザとらしい拍手に遮られた。 「そういう展開重いから要らない、気分転換に職場に連れてってあげて」 自分も子供のスネをかじってる手前、都合が悪いと思ったのか、スナック菓子を手にしてソファに座りだす。 まん丸としたそのフォルムは小さな力士だ。 『こ、小憎たらしい……可愛げのカケラもないよ』 コーヒーをグイッと飲み玄関に向かうと、薄いブルーの水玉模様の洋服を着た王子達は、遅いと言わんばかりにこちらを見ていた。 「はいリードとオヤツ、良かったね~オバサンとピクニックに行けるよ~」 「誰がオバサンだ!十代のピチピチギャルなんだよ」 「ふるっ!行ってらっしゃ―い」 最後まで可愛げなく見送られたが、王子達は嬉しそうに、リードの自由がきく限り走り出していた。 引きづられ気味で嫌な予感しかしないし、この流れは他の世界までついて来そうで頭痛がしそうだ。 まず木村さんに相談して、仕事の内容次第でと考えていたが引きが強すぎて、小走りというかダッシュさせられていた。 「加減しろや!元は化け物と大蛇でパワーありすぎんだよ、飼い主が引きづられてんの気づけや!」 小型犬二匹に引きずられ気味で、他から見れば『か弱い』と思われそうだが、手にはリードが食い込み笑えないし見逃せない。 王子達はスピードは緩めてくれ、キセロはお得意の『テヘッ』をする為立ち止まったが、スルーして歩いた。
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