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今日の任務は社長達の援護なので、お飾り……というか人数集めで入るらしい。
なので全員参加ではなく、私達のみ鷹の世界に行くようだ。
そうだとしても、いつも危険に巻き込まれるので、扉を潜った瞬間から気合を入れて周囲を見渡した。
「うん?他の人が誰もいませんね……」
鷹の世界は『海外の田舎』という印象で、木の向こう側にガソリンスタンドがあるようだが、明かりといえばそこだけで、広い道路がずっと続いている。
「場所合ってますよね?」
「恐らく。もっと進むと街があるんですが、移動手段は車なんでしょうか」
明かりを避けるように外側からガソリンスタンドに近づいてみたが、大型のトラックが一台止まっていて、中では運転手がパンを選んでいた。
見た目は普通の人間だが、私達はスタンドの外側から入ったので、遠すぎてハッキリと顔が見える訳がない。
なのに遠くからチラッと見ただけで『何でこんなとこに?』という表情をしていた。
私は犬螺眼があるので、その顔色の変化に気づいていた。
和音さんはそのまま鷹人間がいるお店というか、小さなコンビニみたいな店内に入り、何やら話かけている。
私は入口付近で何気なく辺りを見渡して警戒に当たった。
少しするとプッシュッ―と音を鳴らし、大きなトラックが一台と、黒のワゴン車が入って来たので、さり気なく背を向け王子二匹を抱えて俯く。
「はぁ、やっとトイレじゃ。おしっこ我慢すると膀胱炎になるからのぅ」
「おじいちゃん下品なんだから、レディの前でそんな事言わないの!」
なんて微笑ましい会話をしながら、近づいて来るトラック野郎とその孫。
ではなく後ろを向いていても声で、妹と社長だという事は分かった。
いつもならキセロが腕から降り、瑠里に向かって走り出すのに、小芝居に付き合ってるのかジッとしている。
社長達はこちらを通り過ごし、本当にトイレ方向に行ってしまうし、服装も運送会社の人と孫はデニム姿だ。
『何これ?どんな作戦か理解出来ない』
王子達を地面にそっと下ろし、店内の様子を伺うと、瑠里が和音さんに話しかけている。
買い物していた運転手は、私の前を横切り自分のトラックへ向かっていた。
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