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「イナリは俺が教育したけど、その大蛇はしつけの必要なさそうだね」
「こいつ恐らく話せると思うんですが、猫被ってというか大蛇被ってて」
「ふぅん、性格悪いなら預かってみたいな」
滋さんが少し興味を示したが、キセロは私の腕の中に潜り込み顔を見てきた。
「いやだ、人の皮を被った悪魔だ、と大蛇の落とし子が言ってます」
「……百合ちゃんの意見にしか聞こえないけどね」
広い一本道は見通しが良かったのに、トラックを確認出来て少し経つと、黒のセダンが数台視界を塞ぐように割り込んできた。
「後ろの小袋取って」
「はい」
シートベルトを外し、後部座席に置かれた黒い巾着袋を手に取る。
ずっしりとした重みと、触った感じは小型の銃にしか思えなかった。
いざとなったら運転変わってと巾着を受け取ると、銃を取り出しベルトに差している。
「それも……イザリ屋仕様なんですか?」
「格好いいでしょ?コンバットモデルを参考に照ちゃんにお願いしたんだ」
双棒以外に銃も使いこなし、刀や飛び道具に眼も武器に使える。
「私の将来が不安になってくるんですけど」
「そう?エリート中の化け物になりそうで興奮して……いや、期待してる」
嬉しそうな滋さんだったが、前のセダンから何かが投げ捨てられ、カラカラ―ンと音を立て転がるのを見ていた。
ボンッと大きな音を立て爆発し、ハンドルを切って交わしたがフロントガラスにヒビが入ると、無表情でイザリ眼を使い吹き飛ばしている。
衝撃で視界が悪くなったけど、これで大丈夫と呑気に親指を立てていた。
「お、お、降ろして下さい―っ!」
キャップを深くかぶるが、フロントガラスのない車の風は半端なくキツイ。
王子達をギュッと抱きしめていたが、ビビるどころか対抗的な視線をしているのも気になる。
追加でボンッ、ボンッと爆弾がばら撒かれると、滋さんはハンドル操作をしながら、ご自慢のコンバットモデルを構えた。
プシュッと静かに発射されると、金色の光を放った弾はタイヤ等ではなく、ダイレクトにセダンの中を縫うように進んでいく。
防弾ガラスを突き破り、座席に到達したのか灰が舞ったので『仕留めた』という事が分かった。
「――す、凄い」
犬螺眼で鮮明に現場が見えたが、少しの間その光景に見惚れてしまった。
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