鷹人間の眼

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「ちょっとたんま!私ごと飲まれそうだから、後であげる」 手を引くとバグッと腕を甘噛みされ、そのまま上に引っ張り上げられた。 「ーーえっ、ええっ?」 宙に放り出された私は、キセロの頭に乗せられ必死に角にしがみつく。 滋さんは一瞬呆気にとられたが、冷静にハンドル操作に戻っていた。 手からチーズたらは無くなっていて、ちゃっかりと頂かれたようだ。 「オヤツ足りないんでしょ?取りに行くのはいいけど、敵減らしてからね」 乗っていた車は遥か下に見え、ひょんな事から大蛇に跨り、協力して鷹人間を蹴散らしに行こうとしている。 「鬼退治っていうか、こっちが鬼みたいな気分だけど……参りますか」 キセロの頭に顔を近づけ話しかけると、やる気のない瞬きの後、下降していく。 双棒を片手で握りつつ、犬螺眼で敵を捉えると、針金の武器で攻撃を開始した。 バシュッ、バシュッと灰にしていくが、キセロにしがみついているのも結構大変で、近くでは剛速球で駆けるイナリらしき風球もいる。 敵は減ってきたし、後は任せて元の姿に戻る方がいいのではと思えてきた。 「イナリ―ッ、おやつだよ―!」 チーズたらを数本掴み、キセロに指示して猛回転している風球へ距離を縮めていく。 気づく訳ないかと諦めかけたが、キュルルルと音が小さくなり始め回転が遅くなり……光が消えるとイナリの姿は見えなくなった。 「王子―!来ないなら、これキセロにあげ……」 ブンブン振り回し声を出していたが、気づけばキセロに飛び乗り、イナリは私の手首にジャンプしていた。 「良かったぁ……」 毛の色も黒ベースだし夜は絶対に見つけられないと判断し、オヤツ作戦で攻めたのは成功だったので素早くリードを繋ぎ溜め息をついた。 「よし、車に戻ろう」 キセロにも残しておいたチーズたらを放り投げると、空中で上手くキャッチしている。 助手席の窓枠から身体を滑り込ませ、イナリと仔犬の姿になったキセロも続き、いい子に膝の上に座るとリュックに視線を注いでいる。
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