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「お、おかえり……」
「ただいま帰りました、すみません、ウチの王子がわんぱく過ぎて」
おやつを二袋開けると、顔を突っ込むようにしてガツガツと食べている。
「いい化け物達がペットで羨ましいなぁ、俺も欲しい」
運転はしてるが獲物を見るような視線を感じたのか、王子達は袋から顔を出すと、私の近くでオヤツを食べている。
「チェッ、般若だって怖いのに何で俺はダメなんだよ」
「――何か言いました?」
ギロリと睨むと思い出したかのように、トラックの鷹人間の話題に戻された。
「あいつは生かしておいて目的地を探らないとね」
「何処に行くんですかね?飛行船で見た奴と違うんですけど」
「そいつの所に連れて行ってもらい、百合ちゃんの復讐を終えないと」
どうやらあいつは虎人間との取引に居た時の、鷹の仲間のようだ。
無色チームの時と違い一回でスパッと終わらない任務に巻き込まれるのは、刺繍のランクが上がったからか引きの良さかは分からない。
どちらにしても『萌葱刺繍』になってしまった事を少し後悔していた。
「……にしても、大蛇を『術』も使わずに操るなんてどこで覚えたの?」
「いえ、それを言うなら瑠里です。八匹連れてましたし、皆別れを惜しんでました」
大蛇の世界に見送った時の事を、思い出すと吹き出しそうになる。
ベタな芝居がかった演技を見せつけられ、挙句の果て、塵里に告げ口をして瑠里について来たキセロ。
悪知恵が働き塵里にすぐにチクるし、性格も悪いが、見た目はトイプードルとチワワのミックス犬なので可愛い。
でもそこを武器とする『あざとさ』が見える私は、単純に容姿では騙されない。
ただ先程の件で、見せかけだとしても気遣ってくれたポイントは高い。
教えてくれず一歩遅かったら……滋さんは助かっても、私は大きなダメージを食らっていたかもしれない。
「イナリ、キセロ有難うね。でもあまり無茶しないでね」
二匹の頭を優しく撫で、両腕で支えようとするとドヤ顔を返され無言になった。
「なんか夜に『ペット達とドライブデート』みたいな空気だけど、まだ任務終わってないからね?」
「……いや、デートとは微塵も思ってません」
双棒を手に前を見据え、フロントガラスがない車で風を感じながら、気持ちを切り替える努力をした。
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