鷹人間の眼

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トラック野郎……。 バーに入ったとばかり思ってたのに、何でこんな所に潜んでいたのか見当も付かない。 「うちのボスから『人間の娘は始末しろ』と言われたんでな」 ニヤリと笑い月明かりに映し出された瞳は、鋭くて獲物を捕らえたら離さないと言わんばかり。 鷹は視力がよく人の八倍だと聞くが、鳥目に少し期待してたのに、こいつらは全く関係なさそうだ。 「あんたらの……ボスは何処にいる?」 自分でも殺されそうな時に、何を聞いているのかと呆れてしまう。 布が外され、私の両脇に腕を回されると「バーにいる仲間も始末されたかもな」と楽しそうだ。 更に上昇し、両手首を持たれた時『落としやがる気だ』と勘づき飛行船での悪夢が甦る。 「おっ?足首にお前の犬がいるぞ、一緒に天国に行きたいみたいだ」 軽すぎて気づかなかったが、イナリがつなぎの裾を咥えている。 その姿を見ると、私の血がドクンと大きく波打った。 「硬い地面に叩きつけられて死ね――っ!」 鷹人間が叫んだと同時にパ――ンッと大きな音が鳴り、灰となり消えた。 『えっ?!』と焦ったが、イナリを足首から引き剥がし、懐にしまい背中を向け落下する。 『王子に衝撃が伝わらないようにしないと!』 後ろを向いてバンジージャンプする気分だが、命綱はない分、恐怖は計り知れない。 おまけに落下するのを見届けるかのように、周りに何かが集まってくる。 「道連れじゃい!ボケェ――ッ!」 双棒を握ったが暗闇に光った眼にピタッと手が止まる。 次の瞬間、腰を支えられ数センチ手前に地面が見えた。 「もう少しでグロい物見せられるところだ」 フワリと身体を持ち上げ地面に座らせてくれたのは、見た事もない鷹人間だ。 バーの中からも鷹人間が飛び出して来たが、背後からの攻撃で灰にされている。 ゆっくりと歩いて来たのは八雲さんで、私は状況がよく分からないまま呆然と立ち尽くしていた。 「薬で自由利かなくされたね、大丈夫?」 さすがは救護も完璧な赤刺繍のリーダー……ではなく、経過を説明して欲しい。 「残りは滋に任せて来た、なんか憎悪に近い殺気に燃えてたし」 カーチェイスで危険な目に合ったし、復讐も入っているのかもしれない。 考えると背筋がゾクッとするが、後ろから助けてくれた鷹人間がゆっくり近づいて来るのが分かった。
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