鷹人間の眼

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「どうやら片付いたみたいだな」 「あ、あの、先程は有難うございました」 空中で近づいて来た時は一瞬敵かと思ったが、今こちらを見据えてるその瞳だ。 『攻撃をしてはいけない』と、肌で感じ取ってしまい手が動かなかった。 「話を聞いても信じられなくて、そちらに任せたものの、こちらでも監視させてもらっていた」 当初の依頼は『虎の世界』だったので、鷹の世界に誰かが知らせ、依頼を引き受け現在に至る筈だが……ウチにそんなスペシャリストがいたらしい。 まだ職場で顔を合わせてない人間が、沢山いるのだと改めて思う。 「お前も、さっき鷹人間を狙撃した娘も……ユニークな人間で、久しぶりに楽しませてもらった」 「――えっ?!」 娘って聞こえた。 イザリ屋で今現場にいるのは、私とトラック運転のじじいの孫役の瑠里だ。 まさか私が家で身体を休めてる間に、狙撃を習得したのかと思うと姉として反省したい。 また差をつけられたとヘコんでいると、鷹人間は一歩近づき穴があきそうな程、人の目を見てくる。 月明かりに照らされた鷹人間は背が高く、どことなく品格があるので、どうせ裕福だと想像がつく。 話を聞いたとか言ってたので、もしかするとトップ辺りかもしれない。 「名前は?俺はトップの雁木(がんき)という」 やっぱりかとクイズの正解の音でも鳴らしたいところだが、オフザケが通じる相手ではなさそうなので素直に答える。 「月影百合と申します」 「カラスのチカラを持ってるな?それと…他にも」 「――ええ」 観察してるのは分かるが、夢中すぎて終いには顎を持ち覗き込んでくるので、シュチュエーションは別として目を閉じればキスシーンのようだ。 「……あの、顔近いんですけど」 「色んな瞳が見えるな、くり抜いて確かめたいくらいだ」 ポツリと呟かれギクッとして目を逸らす。 「すいません、ウチの従業員をナンパするのは止めて貰えませんか?」 八雲さんがニッコリと微笑み割って入って来たが、どうみてもそんな生ぬるい状況ではない。 『この人達の感覚は、どっかの線が切れている』と思いつつ苦笑いが出た。
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