紫陽花の花言葉

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せっかく和やかな空気だったのに、瑠里が蓮とコーヒー飲んでるから皆で一緒にと言われると、慌てて走りノックもせず乱暴にドアを開いた。 「な、な、……何っ?!」 目をパチリとしてカレーぱんを置く姿はいつも通りで……どう見ても早とちりと夢のせいで、神経が過敏になりすぎてたようだ。 「あ、ごめんね。エプロン買って、帰りに社長達に出会って送ってもらった」 「ふ―ん、で?なんでそんな悲劇のヒロイン面してんの、茶して気分転換したんじゃないの?」 行動が手に取るようにバレてるのも恥ずかしいが、顔を見て即言い当てられるのも、姉として失格なようで思わず下を向いた。 「ちょっとバイトしようと思ってさ、どれがいいか沈黙パーマに聞いてたんだよね。究極の選択だけど、虎の世界じゃないって話纏まりかけてたんだけど姉さんもどう?」 蓮さん本人の前で『沈黙パーマ』と言える図太さを持つ妹は違う意味で見習いたい。 初めて会った時は本人曰くソフトアフロらしいが、私達からすればチリチリパーマだった。 無口すぎてコミュニケーションが取れないのは変わらないが、瑠里のアドバイス通りストレートパーマに変え、イケメンに変貌を遂げている。 超がつくほど無口なので、銀刺繍のリーダーのくせに立花の親族とは思えないくらい大人しい…いや、変わり者だとも言える。 そんな奴と上手くコミュニケーションを取る瑠里は凄いけど、この組み合わせは見た目だけでいうとカップルとしてありそうで、弦の時より注意を向けてしまう。 「瑠里さん蓮はの、親族のワシらですら仕事の話以外は滅多にせん。まさかとは思うが……その、Aとか進んでないじゃろの?」 「はぁ?Aって何?あのね、私はこんな若造なんて眼中にないんだよ。家の事を考える大黒柱としては、付き合うなら金持ちのじじい!身体を許すにしても安心して任せられるからね」 「……瑠里、恥ずかしいんだけど。蓮さん顔が真っ赤になって倒れそうなんだけど」 こんなに男性がいる前で、しかも一番年下の瑠里が、カレーぱんを頬張りつつ言い放ったセリフは、部屋にいた全員の動きが止まる程。 なんとか口を開けたのは姉である私だったが、それからは八雲さん達が平静を取り戻したのか、いつもトーンで話を続けてくれた。
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