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浴衣祭り
ゴホゴホッとむせたように咳をしていたが、喉の奥が熱くなり、フラつきながら部屋を出て冷蔵庫のレバーに触ろうと頑張る。
同時に手を伸ばし、こちらの顔を見たのは瑠里。
『何か飲まないと、このまま死ぬるぅ』と言わんばかりの表情だ。
炭酸水のペットボトルを掴み必死で開け、ごくごく飲んでみたが、逆にシュワッとした刺激で奥に進んでいかない。
「てか、なんで炭酸チョイスすんの?ガブ飲みして毒を流し込みたいんだよ」
「一番近かったからしょうがないじゃん……」
とりあえず熱さは取れてきたので、アイスコーヒーに切り替え、座って飲む事にした。
「どうしたの?昼まで寝てたと思ったら、急に騒ぎ出して『毒』だなんて物騒な」
ドラム缶が立ち上がると、トタトタと王子達も後をついて行くが、口には何も下げてない。
『まさか飲み込んだ?』と血の気が引く思いで部屋に戻ろうとしたが、瑠里に腕を掴まれた。
「金の粉が出た時点で、袋消えてた」
「ああ、そぅ……」
ため息交じりにテーブルに頭を乗せ、まずはホッとして目を閉じた。
「起きたばっかで寝てるんじゃないわよ、ダラしない。気合いが足りないからそんな事になるのよ」
スナック菓子と炭酸飲料を持ち、イナリ達のオヤツを広げるドラム缶体型に言われるとイラッとする。
「間食控えたら?また体重増えたんじゃない?」
瑠里も反撃で言い返していたが、何食わぬ顔で口に運ぶ手は、流れ作業のように休む事はない。
渋々支度を始めだしたが、先程の件が気になるので、少し早めに行って木村さんに相談しようと話が纏まる。
おにぎりと味噌汁を食べている頃、何故かこそこそと王子達の着替えも始まるので声を掛けた。
「今日は王子達お留守番だよ?」
「いや、まだ足りないと王子達から申告あった気がするから連れてって」
職場に犬を預けておけると知った母は、勝手に瑠里のバックにオヤツも詰めていた。
一人で寂しくないかと声を掛けたが、今夜はレッドリストと時代劇が深夜まであるので大丈夫と返ってきた。
いつもより早めだが、王子達と職場へ向かう。
受付に誰も居ないのでカウンターを覗くと、奥のテーブルで木村さんが弁当を食べていた。
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