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違いでいうと『犬螺眼』もクリアだが、それ以上に鮮明で、空気の流れまで見えるのではという位、くっきりと遠くまで見える。
――それに動き。
キセロが反復横跳びを繰り返しているが、ジャンプするたびに『狩猟モードオン』になるのか、眼で自然と追っている。
鷹人間に『鳥目』は関係なく語源を調べてみたが、どうやら鶏が夜に動かないというような話で、その他の鳥類は夜でも視力に影響なさそうだ。
仕事には『ベストな能力』と言えるが、既に犬螺眼や他の能力を、眼で使っている私はドキドキしていた。
「仕事上は都合がいいけど、何であまり関わってない鷹のトップが姉妹に……」
ワオンさんは少し神妙な顔つきで考え込んでいるし、リーダーも壁の方を見つめていた。
「そういえば……姉にいい物見せて貰って興奮したとか言ってましたけど」
『はあ?まさか女を武器にチカラ貰ったんか』というリーダーにため息が出る。
「違うに決まってるだろ!私の『眼』と瑠里の狙撃を見た事です」
誤解を招かない為、即座に訂正しておいた。
ガラッと扉が開き、着替の為ロッカーに集合と木村さんの号令で、トレーニング時間は終了した。
イナリ達を入口で待たせ木村さんもついて来ると、手には浴衣らしき布を持っている。
「ふふ、今日は虎の世界のお祭りに行くんだよ。獺祭からの招待もあるし楽しんで来てね」
「えっ?!虎ですか」
血の気の多い世界に行くと思ってなかったので、仕事ではないにせよ、絶対に武器を持って行こうと気合が入った。
瑠里はボタニカル柄で洋服の要素が入ってるし、私は紺地に綺麗な紫陽花の花があしらわれている。
薄っすら化粧をしてもらい、いつもより大人びて見える気がする。
「百合は髪をアップにしたし、紅の色を少し濃くしたからね。瑠里は綺麗なお姉さんだね」
「えっ、私はそのお姉さんに見えますよね?」
「ええ、まぁそうね、二人とも可愛いからそれでいいじゃない」と誤魔化された。
着脱がワンタッチなので早く済み、メークも終わると、木村さんは王子達の浴衣も用意してくれていた。
お礼を言って瑠里はキセロ、私はイナリを着せかえる。
「イナリ凄く素敵!グレーと黒のストライプが似合ってる」
王子がドヤ顔でポーズをとる度に、写真を撮りたいのをグッと堪え褒め称えていた。
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