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「いや、キセロも負けてないよ?イナリも大きさはチワワだけど、目が鋭いから『ヤンチャ』な部分出てるけど、それに引き替え……」
解説をしつつ、イナリの隣に並べるとキセロが『テヘッ』という顔をするので妙にイラついてくる。
「まん丸な眼で首を傾げるポーズが似合う『手を差し伸べたい系男子』ときた」
「手を……って、結局甘えるしか能がない性悪って事じゃん」
一喝してイナリを抱っこし、指示された部屋に向かう。
「般若は怖いね……キセロ、あの人に逆らったら一番怖いから注意して」
丸聞こえを忠告に溜め息をついて部屋のドアを開けた。
中には和音さんとリーダーが浴衣姿でコーヒーを飲んでいるが、和服男子も涼しげで好感が持てる。
「わぁ、やっぱりイケメンは浴衣も似合いますね和音さん」
「おい、あからさまにスルーしてんじゃない」
即座にツッコまれたが、リーダーも虎の世界なら、心配しなくてもホステスさん達に褒められそうだ。
その証拠に何気に緊張してるのが伝わってくる。
「女性の浴衣姿は艶やかですし……ペット用のも可愛いですね」
私達というより、ウチの王子達を見て目を細める和音さんは『犬好き君』だ。
でもイナリは余り懐かないので視線をキセロにやる。
元は大蛇だけど、見た目は犬だし和音さんもそれなりに『疑似犬ライフ』を楽しめる気がする。
おまけに奴なら、クルンとした目で甘えてくるので犬好きにとってはたまらない存在だと思う。
「和音さん、キセロなら触れますよ?」
「それがリーダーが先に抱っこしてて……」
腕に乗せ、瑠里から渡されたオヤツをあげては、強面が僅かに微笑んでいて気持ち悪い。
キセロはオヤツを貰いたいばかりに、可愛いさを利用している等知る由もないと言った表情だ。
「まあ、可愛さの押し売りはしてきますが、オヤツ持ってないと相手にされないかもしれません」
「ふふ、月影家に教育されてるんですか?」
「まさか!ウチは働かざる者食うべか……」
自分で言って墓穴を掘ってる気がしていた。
言われるまで気づかなかったが、可愛さアピールで餌を貰ってるなら、きっちり働いてその報酬で食べてる事になる。
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