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「瑠里ちゃん、家の事心配で年寄り狙う気持ちは分かるけど、この職場だったらみんなお金は持ってるよ?ちなみにAはキスって事だから」
「ブ――ッ!」
コーヒーを口にした蓮さんが吹き、顔にかかった私がギロリと睨むと、慌てて机の上にあったクロスで拭いてくれたがどう見ても雑巾だ。
だた意外とピュアな反応を示した彼に悪気はなさそうなので、手で静止して自分のハンカチで拭き直した。
「そっか、それもそうだね。でも年寄りの方が気持ち的にもラクかな、胸もないし若さしか武器ないから」
「瑠里!いい加減にしなさい……木村さんに軽く説明聞いてから返事します。この職場の人は私達を危険にさらす事は平気なんで信用できません」
話題を強引に変え本当はかなり動揺していたが澄ました顔で部屋を出ようとすると、説明くらいできると滋さんが止めに入り、目が合うとギクッと身体が強張り無言で席に着いた。
虎の世界で最近死体安置所から大量に遺体がなくなり、調べたところトップの幹部の息のかかったお店がキーだという所までは分かった。
ただそれからは全く手が出せず、潜入した者は全員殺されてしまった所でイザリ屋に依頼が入ったようだ。
虎の世界では喧嘩での殺人は日常茶飯事で死体の数も多いが、奪われることはなかったらしい。
でも知ってる悪い者は『虎の強い臓器』に興味を持ち商売をする輩も少なくないようだ。
一応あらすじは聞いたが治安も悪そうだし、潜入した者が全員殺されたという所も引っかかるし、荷が重そうな内容だ。
「まだ潜入の段階で、俺はその高級クラブで女性として働いてるけど…会員しか入れないし、年会費も莫大。代わりに『殺しも揉み消される』ような場所でね」
「そんな無法地帯によく誘いますよね?悪魔なんですか?実は陰で抹殺しようと思ってません?気に入らないなら……」
そんな事一ミリも思ってないとニッコリと微笑まれると、逆に不気味で仮面の下はどんな表情なのか想像すらしたくなかった。
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