狙われる婚約者達

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「ウチの忍者探偵によりますと、近々お相手が見つかるようなので安心して下さいとの事です」 「なっ、なんと!その勘働きワシも欲しいのぅ」 瑠里は昔から第一印象を言い当てるのが得意だが、色々感じ取ってしまうのは、貧乏生活のせいかもしれない。 小さい頃は大人達の顔色を見て、物心つく頃には他人の気持ちを感じ取れるようになっていた。 それでも私には(つちか)われなかったが、そこは姉妹で苦手な部分をカバーし合えている……と信じたい。 「百合、今回は色々あったけど、まだ仕事頑張って欲しいから浮気すんなよ」 「……気持ち悪いんだよじじい、私だ…」 『私だって恋くらいしたいんだよ』 口走りそうになったが、こいつらの前で余計な事を言うとマズいと悟り途中で止めた。 「お姉様、さては彼氏作ろうとしてますね。恋もいいと思いますよ、俺も瑠里ちゃんと早く仲良くなりた…グハッ!」 即座に社長に喉を押され、話せない状態にされるのを見て目を逸らす。 例えでこの有り様だと「彼氏出来ました」なんていうと最悪な日になりそうだ。 それに耐えうる人と言えば親族の誰かという事になるが、弦ではまだ一捻りなので瑠里の相手になりたければ、もっと強くならないと無理そうだ。 心で手を合わせ拝みながら、何事もなかったようにコーヒーに口をつけた。 「お疲れ様、無事に終わったみたいだけど、こんな早くどんな手を使ったの?」 八雲さんがひょこっと顔を出すと、社長が嬉しそうに語り始め、元気そうな姿を見てホッと胸を撫で下ろした。 幾ら親族でも身近で接してる人が危険な目に合うと心配になるし、本当に二度と会えない場合もあるので、他人事でもないし縁起も悪い。 「どうしたの姉さん、目の周り赤くして般若の目にも涙?」 「般若関係ないだろ……八雲さん元気になって良かったなって。あれで死んでたら、将来自分もああなると思うと寝れなくなるし」 人がいるのでキツめのコメントにしたが、蓮さんがこちらを見て笑うので、ギクリと身体が強張る。 あの人は殆ど話さないが、筆談だとじょう舌で何やら不気味だし、笑顔を見ると不吉だと社長から聞いた事があるので止めて欲しい。 そんなメンバーとコーヒーを飲んでいる環境に、馴染んできてないかとドキリとしたのは、梅雨明けの朝日を見る時間帯だった。 (完)
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