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「ママ、いいこと、あった?」
薄暗くなりかけている保育園から家への帰り道で手を繋ぎながら、ふいに、
更紗はまなとに聞かれた。
「何で?」
「いつも元気ないのに、今日はあかるい」
え……。
口紅をつけ直して、いつも明るく見えるようにしてたのに。さっきも降りた駅の化粧室に駆け込んでつけ直してからお迎えに行ったのに。
母としてのそれがせめてものプライドだと思ってやっていたのに。
まなとには、通じてなかったんだ。
言葉を無くした更紗の横顔を
まなとが心配そうに見上げる。
「ママ?」
更紗は我に返り、まなとの目をしっかりと見返して、微笑んだ。
「うん、よくわかったね、まなと。
ママね、今日とってもいいこと、あったんだよ」
「いいこと?」
「戦友を見つけたの」
「せ、ん、ゆ、う?」
「そう、戦友」
「せんゆうって、なあに~??」
「そうだなあ~、気持ちが通じ合う人かな」
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