第1章

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男は暗いトンネルの中を歩いていた。 前方に光が見える。 光の方へゆっくりと歩を進めると駅が見えてきた。 ホームの端にある階段を上がり周りを見渡す。 誰もいない、駅員も電車を待つ人も誰もいない。 ホームから改札口に向かう階段は何処だ? 階段が見当たらない。 男はトンネルの中を歩いていた理由を思いだそうとする。 何時ものように地下鉄に乗って会社に向かおうと、混雑するホームで電車を待っていた。 その後が思い出せない。 頭を抱え思い出そうとする男の耳に、家族の声が聞こえて来た。 「あなた!」 「お父さん!」 「パパ!」 男は顔を上げ声のする方を見た。 歩んできたトンネルとは駅を挟んで反対側に伸びる、トンネルの奥から聞こえて来る。 男はホームから線路に下り、声のする方へ歩み始めた。
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