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男は暗いトンネルの中を歩いていた。
前方に光が見える。
光の方へゆっくりと歩を進めると駅が見えてきた。
ホームの端にある階段を上がり周りを見渡す。
誰もいない、駅員も電車を待つ人も誰もいない。
ホームから改札口に向かう階段は何処だ?
階段が見当たらない。
男はトンネルの中を歩いていた理由を思いだそうとする。
何時ものように地下鉄に乗って会社に向かおうと、混雑するホームで電車を待っていた。
その後が思い出せない。
頭を抱え思い出そうとする男の耳に、家族の声が聞こえて来た。
「あなた!」
「お父さん!」
「パパ!」
男は顔を上げ声のする方を見た。
歩んできたトンネルとは駅を挟んで反対側に伸びる、トンネルの奥から聞こえて来る。
男はホームから線路に下り、声のする方へ歩み始めた。
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