月のうさぎ

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月のうさぎ

今期は、週に一度だけ講義が三つある日がある。 午前に一つ、午後に二つ。それぞれ、九十分の講義。 だが、その午後一番の講義が休講になったのを知ったのは、 登校してからのこと。 お蔭で、次の講義まで三時間以上も時間が余ってしまう。 その上、五月に入ってずっと晴天続きだったにも関わらず、この日は雨。 しかも、雨粒が地面を激しく叩く半端ない土砂降りである。 そのせいで、外を歩く人々は誰しも傘の下に身を縮めるように入れ、 どうにもならないほど濡れる足元を それでも気にするように視線を落として歩いていく。 今日、バイトなくてよかった……。 そんな様子を学内のカフェの窓からぼんやり眺め、 なんとなく胸の内で呟いた。 その俺の横を、顔だけ見知った数人が賑やかに通り過ぎ 近くのテーブルを陣取る。
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