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「ふーん、なるほどね。ただの姉妹ゲンカかよ。ユキナ、俺利用されたってことね」
服を着ながら言うヨシキの眼差しはもう冷静だった。
しかもあたし達を見ながら若干冷笑している。
「そういうのさ、他所でやってくんない? ちょっと俺、今日は疲れたわ」
ゲス男がゲスい顔でゲスいことを言った。
咄嗟にあたしは手のひらに拳をにぎった。
「疲れたんなら、眠らせてあげる」
そう言ったが素早く、ユキナは細い尖った何かでヨシキの首すじを刺した。
アッと声も出ない瞬間だった。
ヨシキはそのまま「ちょっ......」と、何か言いかけたような声を出して床に崩れ落ちた。
「大丈夫よ。眠っただけ。あたし、今ね看護師やってんの」
ユキナはそう言って注射器を顔の位置まで上げて見せた。
そうだった、ユキナは当時、看護学校に通っていたんだ。
「ヨシキをどうするの?」
「あら、まさか心配? こんなゲス男、なんで好きになっちゃった訳? まあ、あっちの方は悪くなかったけど」
さっきまで、激しく絡み合っていた二人の光景が蘇ってきた。
「どうする? 二人でこのまま殺しちゃわない?」
ユキナが倒れたヨシキの頬を撫でながら、まるでゲームを楽しむかのように言う。
「やめてよ。恐ろしい事言わないで」
「あら、殺してやりたい、って思ってた癖に」
「思ってないわよ!」
つい声を荒げてしまった。
「あたし達双子だよ!」
ユキナの口調も激しくなる。
「あんたの事なら大概分かるんだよ。あたし、好きで男に抱かれてたんじゃない。アイナ、あんたあたしの事、分からない? 双子でしょ。本当は、分かってるんだよね。だけど、あんたは認めたくないんだ、ずっと」
ユキナの顔が、昔のあたしの顔が、あたしに迫ってくる。
そして......ユキナの唇があたしの唇を塞いだ。
柔らかくて甘い唇。
滑らかに口腔内を行き来する冷たい舌。
全身に鳥肌が立つ。
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