最寄りの駅のホーム

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 二人を眺めていると、急に母が席を立った。電車のドアの近くへと歩いていく。  老婆の隣が開いたのを見逃さなかった少年はすかさず席に座り、今度は横からパンフレットをのぞき込んで説明を続けた。  私はそちらの方も気になったが、それ以上に母が勝手に移動した方が気になった。なので同じく私も電車のドアへと歩いて行った。  母の近くに私が立つと、母は文庫本から目だけをあげて私を恨めしそうに見上げた。 「……もう、あなたが席を立ったから、私も立たないといけない感じになっちゃったじゃない。まだ降りる駅まで結構あるのに」  電車のドアの近くに寄りかかりながら母がそんな恨み節を言ってくる。  私は一瞬キョトンとした。その後、物凄くおかしくなって思わず吹き出してしまう。  怪訝な顔をした母に対して、必死に大声で笑うのを耐えている私は、冗談めかして母に言った。 「お母さんも私とおんなじで、優しいんだね」
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