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そうだ、悲しかったのだ。涙が流れる感触がした。
それは記憶の中の私か、それとも現実の私か。どちらの私かはわからなかったが、私は間違いなく泣いていた。
そうだ、私は、とてつもなく悲しかったのだ。
私は昔から祖母が大好きだったのだ。嫌な記憶ばかり思い出すからすっかり忘れていた。私は、いつも祖母と楽しく遊んでいた。遊んでもらっていた。
遊園地に行ったのは祖母と一緒に楽しく遊びたかったからだ。実際その日は一日楽しかった、それこそ立ち上がりたくなくなるほど疲れ呆けるまで遊べたのだ。
祖母へのお見舞いに行ったのは祖母に久しぶりに会いたかったからだ。そうじゃなければ反抗期だった私が両親と一緒に出掛けたりなんかするわけない。
祖母の面倒を見ると最初に言い出したのは私だ。だから両親も安心して出かけられたし、私もちゃんとやろうと最初は張り切っていたのだ。
そうだ、私は祖母のことが大好きだったのだ。だというのに私は、なんて、最低なんだ。
結局最後に水を差されたといって祖母に八つ当たりなんてした。
しかもそのせいで病気がちになったり痴呆が進んだ祖母に対して、私は陰口をたたいた。
だったらせめて介護くらい完璧にこなすべきだったのに、自分の不快感を言い訳に祖母を放置した。
私は本当に、どこまでも自分勝手な奴だった。ああ、私は最低だ。最低なんだ。
祖母になんて謝罪すればいいのかわからない。いや、もう祖母には会えないのだから、謝る事すら叶わない。
ならば私は、いっそ死んでしまって祖母に会いに行けばいいのではないか。そこで今までのことを謝りたい。心底そう思った。
私がそう強く願うと、まるで私の気持ちを察したかのように、ちょうどいいタイミングで地下鉄の車内に車掌の声が響いた。
「次はー、下。下に参りまーす」
私なんて、どこまでも落ちてしまえばいい。そう思った。
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