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ウブな伽耶は全力で俺を押しのけるだろうな。
もし、『あざみ』だったら…
ウフフ、と妖艶に笑ってしばらく俺を受け入れてくれるはず。
こんな不埒な想像をするのは、明らかに気持ちが高揚しているから。
俺の中で今でも、あざみは特別な存在だ。あんないい女、忘れられっこない。
終点くろゆり駅到着まであと30分。退屈した伽耶が自分のスマホを弄り始め、俺は幽体離脱よろしく、ここぞとばかりに記憶を辿る旅に出る。
あざみと出逢ったのは5年前。
25歳の俺は手っ取り早く稼ぎたくて、宅配便のドライバーのアルバイトを始めた。
担当地区にある、くろゆり駅徒歩3分の花屋【フローリストAZAMI】には毎日のように何かしらの荷物を届けていた。
40歳くらいの茶髪をくるくると巻き上げたスレンダー美魔女がいつも感じ良く「ご苦労様」と言って受け取ってくれた。
毎日顔を合わせているうちに、
自然に会話をするようになった。
始めは「仕事忙しいの?」とか、たわいない質問から。次第に
「どこに住んでいらっしゃるの?」
と次第にプライベートな領域へ。
伝票に記された俺の名前を覚えてくれた。
「吉田君…は素敵だから、彼女いるんでしょ?」
「いませんよ、そんなの」と照れながら当時は本当にいなかったから答えると「今度、ご飯に行かない?」と誘われた。
もちろんオッケー。
15歳くらい上だけど、あざみはめちゃくちゃスタイルいいし、 オシャレだし、誰もが振り向くいい女。
あざみに連れて行かれたイタリアンレストランでワインをがぶ飲みした夜、あざみの自宅である『フローリストあざみ』の二階で俺たちは関係を持った。
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