母は倹約家

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 中学校のテスト明け、生徒たちは一喜一憂する。 「やべーわ、七十点取れてない科目あるわー」 「なんで、やばいの?」 「いや、全教科七十点以上じゃないとゲーム禁止なんだよね。ってか、お前の方がやばいじゃん! 五十点て、絶対怒られるじゃん!」 「いやあ、五十点で良かったよ。七十点なら怒られてたね」 「?」  怪訝な顔の同級生を残して、彼は帰る準備をする。  帰り道、スーパーマーケットをはしごして、数枚の安売りチラシを確保する。  そのチラシの一番後ろに彼は自分のテストを忍ばせる。  家に帰ると彼の母が言った。 「今日、テスト帰ってくる日だったわね。見せなさい」 「うん、あと、ポストにチラシが入ってたよ」  チラシを上にして、テストを含めた紙の束を母親に渡す。 「あら、あのスーパー、セールやってんのね!」  母親が熱心にチラシを読み始める。 「あらあら! お野菜がいつもより三十パーセントオフ! あら! 牛肉なんか四十パーセントオフじゃない!」  そして、息子のテストを手に取る母親。 「あらあ! このテストなんか五十パーセントオフじゃない! 半額よ半額! お得だわぁ!」
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