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「え…………」
重力に身を任せた落下で、少女は数秒の間だ け虚空を漂った。その華奢な身体は瞬く間に固い地面へと吸い寄せられ、ただ眺めていたレイスからは見えない建物の死角へと直撃する。
酷く鈍い音を漏らしながら、少女は夜の静寂の一部と化したようだった。
「えっと…………」
あまりに突然すぎて、理解が追い付かない。
けれど、つまり、これは──自殺という行為に、他ならない、のであって……。
「────っ!」
レイスは弾かれたように、一目散に少女の元へ駆け始めた。
もしかしたら予感していたのかもしれない。
もしかしたらわかっていたのかもしれない。
少女が──死ぬためにあそこに立っていたことを。
しかし、今はそんなことを考えている暇はない。とにかく一刻も早く、少女の姿を見つけなければ。
「お願い……無事でいて。せめて死なないで……!」
あんな高い場所から落ちてなんて盲目的な願いなのだろう。しかしそう願わずにはいられなかった。
少女が落ちた先はどうやらゴミ捨て場のようだった。だがまったく安心できない。なぜならゴミはゴミでも、金属類を捨てる場所だったのだから。
収集される前だ。廃棄され、錆び付いたりした様々な金属が見受けられた。そしてそれらに覆い被さるように、少女は倒れていた。
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