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「────っぅ!」
目に刺すような痛みが走る。すると少女の背中には、赤い光の翼が生えているように見えた。
「え……何、これ……天使……?」
口をついて出た言葉は、それだった。
しかし瞬きをしてもう一度見ると、その翼は消えていた。
「一体、何が……えっ……!」
そして、もう一つ大事なことに気づいた。
「何で……無傷……?」
凄まじい勢いで地面に叩きつけられたはずなのに、少女の身体には、擦り傷も、一滴の血の痕さえもなかった。
あるとすれば、身に付けていたワンピースが金属類によって切り破られていることくらいだろう。
たしかに鈍い音がした。身体を打ち付けたような音が。
けれど、少女にその傷は、一切残っていないのである。
治癒術を誰かが施したというのもあり得ない。だとしたらその人物はどこに消えたのだ。
「…………けて……」
「え…………?」
声が、聞こえた。
他の誰でもない。それが少女から発せられたものだと気づくのに、時間はかからなかった。
近寄ったレイスの服の裾を華奢な手で掴み、少女は呻く。
「……たす……けて……」
そう、唱えた。
少女の頬を一筋の涙が伝う。そして力なく腕を落とし、動かなくなった。
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