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──まずい。
頭の中で何度も警鐘が鳴る。早くこの場を離れなければ大変なことになると、悟った。それは文献で得た知識でも経験でもない。
──いわば直感だ。
「バカなこと言わないで。私はあなたの思い通りになんて──」
「レレイ。いいわ、やって」
「かしこまりました」
その場から逃げようと踏み込んだ足が、その場で動かなくなった。足だけではない。身動き一つ許されない。
「私の操作の魔術から逃れることはできませんよ。たとえ、あなたでも」
女の横にはいつの間にか別の少女がおり、侍女のように付き従っていた。そして彼女が口を開くたび、自らの体に負荷と目眩が波のように折り重なってやってくるのを感じる。
「汝、病める時も健やかなる時も」
それは誓いの言葉。
「互いを愛し、愛され、尽くし、尽くされることを」
──聞いてはならない。そうわかっていても頭が働かない。
「誓いますか」
──答えてはならない。そうわかっていても体は言うことを聞かない。
「誓います」
先に女が答えた。屈託のない、純真無垢な笑顔で。うっとりと何かを思うように。
「──ぅあ、ち、か」
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