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──言っては、いけ──。
「ち、かい、ま、す」
わかっていても、そう口にしてしまった。
「うふふ」
女が笑った。まるで自分が答えるのを待っていたかのように、笑った。
──そして、女は唇に唇を押し付けた。
その時、その夕闇色の瞳が煌めく。
「──っ、きゃっ!?」
突如、大地が揺れる。いや、大地というには狭いだろう。
空間だ。空間そのものが揺らいでいた。この次元そのものが不安定に揺れ始める。
「な、なに──?」
「ありがとう。あなたのおかげですべてが終わるわ」
揺れはどんどん大きくなり、ついに空間に黒い、何者をも飲み込みかねない漆黒の大きな穴が開いた。
「『黒と白が交わる時、すべてを混沌へと誘う力、現れん』。これが、そうなのね」
穴はやがて一つの宝玉をして生み落とす。それは黒くて黒くて黒くて黒くて、見ているだけで闇に飲み込まれてしまいそうな不安な気持ちになる。心の内から、その宝玉を拒絶する力が働く。
「──それは」
それが何なのか、ようやくわかった。
そして、これから一体何が起こるのかも、わかった。
「知っているでしょ? 『魔珠ケイオスハート』」
──女はその名を口にした。
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