序章 黒白刻

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「誰が……っ!」  一体誰がこんなことをしたのか、その正体を探ろうとするが、もう遅いことを周囲の景色が変化したことから悟る。  体は、今度ははるか空中を舞っていた。 「…………魔女を止めなきゃ」  誰が"助けてくれた"のかはわからないが、それでもやらなければならないことはわかっている。  ──世界の崩壊は、始まってしまったのだ。  彼女は自らの落下する体を気にも止めず、ただその術だけを考えていた。  ◆ 「殺し損ねてしまったのね」  彼女はさして残念とも思わない声色でポツリと呟いた。 「追いますか?」  一歩離れたところで、使い魔のレレイがそう問いかけるが、彼女は首を振る。 「いいわ。心も体も使い古してるような子なんて、さして今後の邪魔にならないし」  そのまま踵を返し、空気をさっと一撫ですると、彼女は魔法陣を作り出した。魔女たる彼女だからなせる技だろう。 「帰りましょう。ここもじきに崩れるわ」 「わかりました」  展開された展開魔術の穴をくぐり、二人は根城への帰路を捉える。 「──さあ、終わりの時間がやっときたのよ」  彼女はそう言った。  ──誰よりも想いを込めて、誰よりも悲しげに。
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