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実家は町外れにあった。
電車に2時間ほど揺られると、花ヶ崎に着く。そこが生まれ育った場所だ。
何もないところだったが、学校から帰ると、温かな食事の香りをさせながら迎えてくれる家族のいる家が私は大好きだった。
中でも私はおばあちゃん子で、祖母にべったりだった。よく我儘を言って困らせたものだ。それでも祖母は、いつでも優しく私を抱きしめてくれた。
しかし、小学3年生の頃だろうか。
元気だった祖母が倒れた。
心筋梗塞だった。
安っぽいドラマみたいな、そんな、よくある話だろう。
その日も私はいつものように、我儘を言って祖母を困らせた。多分お菓子が食べたいとかそんなつまらないことだったと思う。
しかし生憎その日はお菓子がなかったのだろう。
眉を下げて「困ったねぇ」と笑う祖母に、私は悪態をつき家を後にした。
帰ってきた時には、祖母は病院で冷たくなっていた。
どうしてあの時あんなことを言ってしまったのだろう。
祖母の葬儀で私はずっと涙を流していた。
何度も何度も謝った、けれど祖母はもう抱きしめてはくれなかった。
葬儀が終わり、私は1人で祖母とよく行った河原に向かった。1人で河原に座り、傾いた太陽を見ながらさめざめと泣いたのを覚えている。
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