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黒い服に身を包み、田園風景を歩く。
するとあの懐かしい河原が見えてきた。
私はちらりと時計を見て、少し寄り道することにした。電車の中で思い出していたせいだろうか、あの頃とちっとも変わってないような気がした。
河原に下りると、ちょこんと小さな人影が見えた。
先客がいたか、と少し残念に思いながらその人影を見つめる。
小学生、だろうか?その肩は、少し震えているように見えた。
声をかけようとも思ったが、このご時世である。下手に関わっては警察に通報されかねない、と私は踵を返した。
その時、カサリとスカートから音がした。
足を止めてスカートのポケットを探る。
すると街でもらったあの「新商品」が出てきた。
小さな袋に入ったそれを見て、私は目を見開く。
「これって…」
袋には、説明書きがついていた。
【魔法の金平糖~あなたを元気にします~】
私はその見覚えのある金平糖と、初めて見る説明書きを見比べた。
もう一度河原に目をやる。
震える小さな背中が、まだそこにあった。
私は説明書きをくしゃりと丸めてポケットにしまい、金平糖をぎゅっと握りしめた。
すぅっと息を深く吸う。
風に乗ってふわりと、夏の匂いがする。
そう、これもきっと、よくある話なのだ。
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