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「よく食うな、おまえは」
「お腹が空いちゃって空いちゃって、もうたいへん!」
ズルズルと焼きうどんを吸い込む。
「太るぞ」
「2人分なんだから、食べないと栄養が回らない」
「最近は妊婦さんも、医者から体重制限されてるんじゃなかったっけか」
「でも、2人分なんだから」
申し訳なさそうに眉を寄せるが、妹は焼きうどんを口に運ぶ手は止めない。
実家のリビングのテーブルに直置きしたホットプレートに、山盛りだったはずの焼きうどんがほぼなくなっていた。
「ずいぶん大きくなったな、おなか」
「立派なもんでしょ」
満足そうにおなかをさする。
「寒いな、窓閉めようか」
リビングの窓から射す光は柔らかく暖かいが、レースのカーテンを揺らす風はまだ少し冷たい。
「お兄ちゃんも赤ちゃん欲しくなった?」
「いつかは欲しいけどね」
「その前に結婚しないとね」
「大きなお世話だ。それに、お前は結婚する前に赤ちゃん授かったろうが」
えへへー。ごまかすように、また焼きうどんを頬張る。
妹はいわゆる、できちゃった結婚をした。同時21歳、これから社会に出てバリバリ働き始める時期だった。
「体、大丈夫なのか?」
立ち上がって、ガラス扉から外を眺める。
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