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ガラス越しから見える新生児室には、たくさんの赤ちゃんが眠っていた。
とても静かで穏やかな空間だ。僕が歩くたびにサイズの合わない病院のスリッパがペタン、ペタンと音を立てるのが申し訳なかった。
妹が産んだ赤ちゃんを見つけた。
目を閉じたまま、小さい手足を宙で動かしている。
奇跡の出来事にしか見えなかった。
新生児室から廊下を挟んで反対側の窓からは病院の敷地に咲く桜が見下ろせる。花粉を気にせずに4階の高さから落ち着いて見下ろす桜は、妙にクリアで美しかった。
エレベーターで3階の病室に降りて、妹の旦那さんの両親と2、3分程度言葉を交わしてから、病院の建物を出た。
これからの自分の人生が大きく変わることは分かっていた。分かっていたけど、どうすればいいか分からなかった。自分以外のみんなも、自分の人生の変化にどう対応すべきか分からなかった。
病院の敷地に咲く桜を見上げる。
やっぱり、桜は見上げる方がいい。
少し遅くなったけど、帰りがけに駅前で昼ごはんを食べて帰ろう。
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