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『玉姫様! どうか落ち着いて下さい!』
大勢の兵士たちと私を最初に迎え、声をかけた優しげな顔をした白を基調とした服を着た青年が向かえの廊下から現れ前に後ろと完全に逃げ場を失う。
『何なのさ…何なのよ、本当にもうっ…!』
ただ帰りたい。その気持ちが強くなればなるほどなんだか胸が熱くなるのだ。どうしようもなく熱い胸の辺りの服を握りしめて、キッと後ろを振り返りあの宝石のような瞳を睨む。
『帰してよ…私を! 家に帰して!』
瞬間 私の体を真っ赤な炎が抱いた。
炎で出来た槍が何処からともなく現れ私の周りを旋回したかと思えば二本の槍は火の粉を振り乱しながら赤い人へ真っ直ぐ的を得ようと飛来する。
『えっ?? やだ…待って! やめて、止まって!』
いやだ いやだ いやだ
なにがそんなに嫌なのか? 人を傷付けるから? 確かにそれも怖い、とても怖い…でも。そうじゃない、そうじゃないんだ。
私は“あの赤い人が傷つくのが嫌”なんだ。
なんで…?
まだ会ったばかりで自己紹介すらしてない。…ああ、そういえば私も名乗ってない。あの人も名前…呼びたかったのかな。だから“我が玉”としか呼べなくて…。
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