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クロスは目を覚ます。
懐かしくて、とても苦しい夢を見たような気がするが、何だったか。
ぼんやりとした意識の中体を起こすと、するりと黒いマントが滑り落ちる。ジェイドのものだ。
「やっぱり治癒力は化物並ですね。」
その言葉に振り向くと、ジェイドが食材らしきものを切っていた。
空の色は青と赤。一番星も輝いていることから推測するに、クロスはジェイドが夕飯を作っているという事を理解する。
だがしかし、自分はどうして寝ていたのか皆目検討もつかない。
「私どうしてたんだっけ。」
ジェイドはその言葉を聞いてある物を取り出した。そして、それをクロスに見せつけながら言う。
「これ。クロスさんはこの眠り実を食べて爆睡してたんですよ。普通だったら昏睡状態になるんですがね、クロスさんは約3時間で起きました。」
「やだ、私すごくない?」
「ええ、すごく馬鹿です。」
「何で!?」
「前に散々説明しましたよね?この実は危ないから食べるなって。それを忘れるなんてものすごく馬鹿です。」
「だってお腹空いてたんだも~ん。」
「全く」と言いながらジェイドは夕飯作りを続ける。よく見ればその食材は眠り実の解毒となるものばかりだ。
クロスはジェイドが「もし食べてしまった場合はこういうのが解毒になりますから」と何度も説明していたのを思い出す。憎まれ口を叩きながらも、本当は心配してくれていたのかと思うと、何だか微笑ましかった。
「フフ。」
「何笑ってんですか。」
「べっつに~?」
クロスはそう言うと立ち上がって伸びをした。
改めて辺りを見回すと、森の中にいる事に気が付く。
鬱蒼とした木の葉が少しその成長を緩め、空を覗く事を許した小さな空間。そこにクロス達はいた。
そういえば森を歩いてきたんだっけとクロスは思い出す。人を拒むような深い森を。たまたまこの森を通る事が次の街への近道で、自分達は旅に慣れている為にこのルートを選択したが、一般人だったらすぐに音を上げてしまうだろう。 そう、つまりはここに人はいるはずのないのだ。
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