アクションを見た後は自分も強くなった気がして格好付けちゃう

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「きゃああああああっ!!!」 人がいないはずの深い森に響く、誰かの悲鳴。 まだ幼いその声は、クロス達を当たり前のように動かした。 声のした方向へ走る。そう遠くはない。まだ間に合うはずだ。 クロスは鎖鎌を天を覆う木の枝に向かって勢いよく投げると、振り子の原理で飛躍した。 確かこの辺りから声はしたはずだ。クロスが周囲を見回すと、微かに動く草影が目に映る。 その草を掻き分けると、そこにはひとりの少女が座り込んでいた。クロスに気付くと「ひっ」と短い悲鳴を上げる。 「大丈夫。私達は君の味方だよ。」 「…こ、来ないで…。」 肩を震わせながら、不器用そうに後退る。よく見るとあちこちに擦り傷や痣がある。何があったかは分からないが、恐らくここまで必死で逃げてきたのだろう。 少し間を空けてジェイドが追いつく。クロスとその向こうの少女を見て状況を察する。ジェイドは少女に目線を合わせると、彼女の傷を治癒の魔術で癒やし始めた。少女は震えながらも、少しクロス達への警戒を解いたように見える。その時だった。 足音が近付いてくる。無機質で何の感情も込められていない不気味な音。まるで鎧だけが歩いているような、そんな音。それは遠くから近くへ、どんどん迫ってくる。クロスは鎖鎌を構える。その音の方向を見据え、何が来てもいいように臨戦態勢に入る。 ざっ、ざっ、ざっ、ざっ。足音が止まる。暗闇から浮かび上がったのは銀の騎士。その顔は兜で隠れていて分からないが、直感的な嫌悪感と少女が青ざめていくのを見てクロスはそれを良くないものと判断した。 「ジェイド、その子任せた。」 そう言った刹那、勢いよく地面を蹴り、宙を舞う。そして鎖鎌を銀の騎士目掛けて振り下ろす。 仕留めたかのように思えたクロスの高速の斬撃は、しかし銀の騎士の剣捌きによって防がれた。 クロスの鎌と銀の騎士の剣が重なってカチカチと音を立てる。いつもならば振り下ろせる筈の鎌が止められてしまっている。このままでは不利と思ったクロスは後方へ飛び離脱する。銀の騎士はクロスの方には目もくれず、あの少女の方へまた不気味な足音を立てて近付く。
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