アクションを見た後は自分も強くなった気がして格好付けちゃう

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ジェイドが少女を庇うように立つ。 先程の剣捌きだ。迂闊に攻撃はできない。だが、この騎士は確かに少女を狙っている。何かをしなければ、自分は助かっても少女は助からない。この状況を脱する為にはとジェイドが模索していると、騎士の後ろでクロスが視線を送る。何も言わない。けれど、それがどういう意味なのか相棒であるジェイドは読む事ができた。 騎士がジェイド達の前で立ち止まる。そして、その剣を振り上げたその時。 『不動となれ、猛る腕よ』 ジェイドが唱えた支配の魔術。それに合わせてクロスが鎖鎌で銀の騎士の腕を捕らえる。魔術と物理による二重の拘束。流石にこれでは剣を振り下ろす事ができず、銀の騎士は剣を振り上げた態勢のままで止まっている。 そこでクロスが仕掛ける。鎖鎌を思いきり引き、そのまま後方の木に叩きつけた。騎士はその勢いに負け、剣を落とす。それをジェイドが魔術を使って奪う。 騎士は暫くそこに倒れていたが、また立ち上がった。だが、そのまま白い霧となって消えてしまった。ジェイドが奪った剣も同じく消えた。 絶対的に安全というわけではないが、危機的状況は脱した。クロスはふぅとひとつ溜息を吐く。ジェイドも同じく。ただひとり少女はまだ肩を震わせ、青ざめていた。 「…ごめんなさい…私が…私が…ごめんなさい…。」 戯言の様に何度も繰り返し、そしてふっと糸が切れたように意識を失ってしまった。 倒れるその体をジェイドが支え、クロスに視線を送る。クロスは頷く。 「その子連れて、とりあえず戻ろう。」 その言葉を聞くとジェイドは少女を背負った。少女は未だに小さな声で「ごめんなさい」と無意識に呟き続けている。クロスはその声を聞きながら、彼女の頬を伝う涙をそっと拭った。
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