序章

2/10
前へ
/13ページ
次へ
*** 「ジェフ!誕生日おめでとう」 「おめでとう!」 と、通りすがりのクラスメイトがジェフの机にお菓子を投げ入れていく。こんもりと、それはすでに小さな山を作っていた。 ジェフリー=ワロンスキーは今日で19になった。魔術師たちの中では、19歳からが成人として認められる。ジェフは好物のコウモリ・クッキーを口いっぱい頬張った。 「おまえ、本当にそれ好きだよな。俺は固くて無理」 そう言って菓子の入った袋を投げて寄越したのは、悪友のヨルゴ=カードリッチである。 「この固さがいいのに」 ヨルゴは向かいにどかっと座った。 「そういえばジェフ、おまえ今日面談だよな?」 「…忘れてた」 ここ、レオダール魔術師学校は魔術師を育成するための教育機関である。ジェフやヨルゴ、見習いたちは成人に達すると、教員と一対一で進路相談をしなければならない。来年度から進路に沿った授業を取らねばならないからだ。 進路といってもさまざまであり、魔術師一人一人個性が違うので、大体は得意なものを極めていくスタイルである。 「得意なもの、ねえ…」 「俺とおまえには、何をやらせてもそれなりにできちまうもんな」 と、ヨルゴはため息をついた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加