序章

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「ヨルゴは先月誕生日だったよな?進路、どうするんだ?」 進路については、魔術師見習いたちの尽きない共通の悩みである。 学校では3年目で進路をある程度固め、プラスで3年間修業した後に就職する。 人間社会に溶け込むやつ、魔術連盟に入会するやつ、研究の道に進むやつーーー 魔術師は何かしらの組織や団体、集団単位で動くのが常識だ。そのために、無職はあまりよいイメージを持たれない。ただし、自分の魔術を極めるために「研究申請」というものができ、申請するとかなりの補助金がもらえるのだ。 自身の魔術、唯一無二の技・・それらはひとつの技術として魔術界では重宝される。技を極め、一定の領域に達したものは賢者と呼ばれ、魔術師の到達点として名誉が与えられる。言ってしまえば、魔術師ひとりひとりにそれぞれの到達点があるのだ。 「うーん、俺もよくわかんねえ。とりあえず古代魔術研究を中心に授業を取ることになった」 「古代魔術かあ・・」 とくに夢も目的もなく、ただ魔力をもてあまして入学したジェフは不安になった。それが顔に出ていたのか、ヨルゴは励ますように強く肩を叩いた。 「まあ今はわからなくても、何年後かにはやりたいことがみつかるかもしれないしな!とりあえず、気軽に行ってこいよ」 「そういうもんかねえ・・」 はあ、とジェフは大きなため息をついた。封を開けてしまったぶんのクッキーを口に放り込み、悪友と別れて面談の行われる教室へと向かった。まだかなり時間があったが、時間を無為に過ごして不安な気持ちで待つよりは、時間まで校内を歩き回るほうがましかもしれない。
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