序章

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教員塔のある建物の近くに、「黒の森」と呼ばれる森がある。常に異臭がするため、見習いはあまりこの森には近寄らない。 「暇つぶしにはいいかな」 と、ジェフは袋を手に持ち、クッキーをぼりぼりかじりながら、面談の時間まで森を少し探索することにした。 「黒の森」と呼ばれるのにふさわしく、森に入った瞬間光がさえぎられ、暗く、じめじめとした場所に入り込んだ感覚が強くなった。視界はあまりよくない。つん、と腐った卵のような匂いが鼻をついた。 ジェフは杖を取り出した。ジェフの杖はとりわけ長く、形状はステッキに近い。 呪文を小さくつぶやき、杖の底で地面を軽く2回叩くと、紫がかった光の玉がジェフのまわりを飛び交った。初級魔術なので、たいていの魔術師には使える術である。 光の色は術者によって異なるのが面白い。ヨルゴは確かオレンジだったか。 この異臭の正体を突き止めようと、ジェフは匂いのする方角へと足を進めた。
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