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「優香ー!こっちよー!」
一個向こうの車両からお父さんとお母さんの声が聞こ
えた。私は嬉しくなってお父さん達がいる方に向かっ
た。
車両を隔てる扉を開けると心がふわふわした不思議
な感覚に陥る。暖かくて優しい気持ち。
だけどなんだか体の感覚が無くなっていくようで
不安になった。
目の前にお父さん達が居るのにどうしてだろう。
「優香良かった無事だったのね」
お母さんは私を抱き締めると頭を撫でてくれた。
「さぁ一緒に行こう」
お父さんとお母さんが手を差し出しその手を握ろうと
した時だった。
「優香ーー!!負けるな!頑張れっ!!」
伸ばしかけの手を止めて私は声のした方向を振り替え
る。
力強く私を呼ぶ声。
いつも側に居て私を見守ってくれていた声。
そうだ!何で私は忘れてたんだろう。
私は呼吸を整えて声のした方向に向かって
「今行くよ!だから待ってて!」
そしてお父さん達の方に振り返って
「二人ともごめんね、私まだそっちに行けない...」
そう言うとお父さん達はニコッと笑って消えていっ
た。
そう私はまだそっちに行けないんだ。
私を守ってくれた二人の為にも私は前に進むんだ。
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