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「おまえ、本当に使えねーな!」
氷のように冷たい瞳で蔑むようにアリエッタを見下ろして、エミリオはその整った顔に引き攣った笑みを浮かべる。床に転がったチェンバーポットの陰からうねうねと蚯蚓が這い出てきて、アリエッタは悲鳴をあげて尻もちをついた。
エミリオは指先で蚯蚓をつまみあげると、立ち上がることもできず、じりじりと後退るアリエッタに追い打ちをかけるように、ぽいと蚯蚓を放り投げた。アリエッタは短い悲鳴をあげて、慌ててその場を飛び退いた。
ふらつく脚を奮い立たせて蚯蚓から距離を取るアリエッタを眺め、エミリオは冷笑する。
どうしてこんなことをするの……?
アリエッタが泣き出しそうになったとき、部屋の扉がけたたましくノックされた。エミリオの返事を待たずに開かれた扉の向こう側には、この家の長男でエミリオの兄であるウルバーノが立っていた。
透きとおる碧い瞳を向けられて、アリエッタは思わず脚を止めた。大きな手に手首をしっかと握られて、アリエッタの背筋にぞくりと冷たいものがはしった。
ぐるりと室内を見渡して、まだ笑い続けているエミリオに目を留めると、ウルバーノはやれやれと肩を竦めた。
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