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夏樹は俺の……親友。
出会いは幼稚園に遡る。まず仲良くなったのは俺たちの母親だった。同じバス停で同じリンゴ組。仲良くならないはずがなかった。
夏樹は背も小さくて、髪の毛は細く、柔らかい天パ。生まれながらにしてクルクルなんだ。長めの髪は束になってあちこちにカールしていて、ふわふわで可愛かった。だから女の子によく間違われた。実際泣き虫だし、あまえんぼだし、いつも俺の後を金魚のフンみたいにくっついてた。おとなしいから俺の姉ちゃんに小さくなった服をよく着せられて、着せ替え人形にされてたっけ。
なんせボーッとしてどんくさいから、俺がずっと守ってやってたし夏樹も俺になんでも頼ってきた。
だけど、そんな夏樹が中三になると身長で俺を抜いた。
人は成長する。それは、体格に留まったことじゃない。
夏樹は誰とでも明るく仲良く話せるようになって、自分でどんどん友達を作るようになった。元から温厚な性格だし、友達は直ぐにできた。泣き虫じゃなくなって、俺を頼ったりもしなくなった。
俺たちは普通の親友になった。対等な関係。
高校になると更に夏樹は身長を伸ばし、俺は置いてきぼりになった。スラッと背が高く優しい整った顔つきの夏樹は女子からキャーキャー言われるようになって、こっちの面でも俺を置いてけぼりにした。
夏樹が悪いわけじゃないのはもちろんわかってた。俺も別にそんなことでいじけたりしない。でも、ちょっとだけ寂しくはあった。もっともっと成長したら夏樹はどうなっていくんだろう。俺たちはどうなっていくんだろう。そんな漠然とした不安が胸の奥で静かにくすぶってはいたから。
夏樹が俺ではない誰かを隣に置く日がくるんじゃないかって。
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