Can I sit here?

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「クソォッ!」   誰もいない倉庫で置き去りになってる机を思いっきり蹴って、その勢いのままドサッと椅子に座った。背もたれのネジが外れているのか勢いのまま異様に沈む背中。ギシギシと嫌な音がガランとした埃っぽい倉庫に響く。 「はぁ……」  深く重いため息を吐き体を起こせば、今度はギイギイと鳴る。両膝で肘を支え重力にまかせ項垂れた。  ずっと同期でチームを組み、一緒にやってきた坂本。友達だと思っていた。パートナーだと。でも、違った。  俺がずっと練りに練ってきたプラン。アイデア出しから言えば一年半だ。それをアイツはごっそりまるごと盗み、自分のものとして会社へ提出しやがった。  信じていたのに、信じていたからこそ話した。  温めてきた企画を始めて話した日。  坂本は目を輝かせ、興奮したように身を乗り出し熱心に聞いてくれた。「すげぇな! 絶対進めるべきだって!」と励まし応援してくれた。飲みに行けば「例のアレ、どうなの?」と進捗を気にしてくれていた。  思えば、資料集めだなんだとちょこちょこ手を貸してくれていたのも、「進み具合はどうだ」とか、「困っていないか?」とか心配してくれていたのも、全部俺の作り上げたデータを盗み見するためだったんだ。  それなのに、俺はアイツに感謝までして。人がいいにも程がある。……いや、完全なるバカだよ。  俺とアイツが組んで仕事をしていたのは誰の目から見ても一目瞭然。今更俺が企画を盗まれたと主張したところで、誰も信じない。ただの言い訳、戯言だと言われるに決まっている。  部長の横に立つアイツの顔。ニコニコしていた表情がチラッとこっちを向いた時、確かに見えた。優越感に浸った表情。忘れられない。あれがアイツの本当の顔。俺は今までいったいアイツの何を見てきたんだ!  発狂したくなる気持ちを押さえつけ、自分の膝を思いっきり殴った。  何度拳を打ち付けたってスッキリなんかしやしない。俺の一年半は戻ってはこない。  情けないよな。もうとっくに終業時間を迎えているってのに、こんなところに一人隠れて暴れているなんて。本当に情けない。  こんなことがあったのに何一つ主張できず、自ら隠れて……自分を殺して……。  俺はいつだってそうだ。昔から――
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