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二年生になって、不安は更に濃くなった。
『腐れ縁の幼馴染』はオールマイティーの通行手形なんかじゃない。俺たちに初めて訪れた進路という名の分岐点。
夏樹は大事だけど、なぁなぁで大人にはなれない。それは夏樹にしても一緒だった。
そして三年。受験の夏。恒例の花火大会にもちろんくるやつなんかいない。みんな塾や勉強に忙しい。普通は来ない。来たのはやっぱりレギュラーメンバーの俺と夏樹だけだった。
例年の如く俺たちは児童館の倉庫に上り、二人並んで花火を観た。
卒業し、大学に行けば離れ離れだ。俺も夏樹もこの街を出る事になる。
見上げる花火は俺たちの最後の花火だった。
無事俺たちは自分の決めた進路を辿り、大学へ進んで……夏樹とはそれっきりだ。
俺の不安はとうとう現実になった。
歩む道を別々に決めた俺たちの末路はありふれた自然消滅。
子供の頃は夏樹は夏樹で、俺にとって唯一の人間で、他に変わりなんて考えもしなかった。夏樹と離れても友達はできたし、彼女だって作った。俺を裏切ったアイツだってそのうちの一人だ。
裏切られた俺が言うのはおかしいかもしれないけど、大人になれば付き合いは子供の頃とは違ってくるのは当然だ。掛け替えのない唯一無二の絶対的な相手だとかそんな風に思えることは無くなる。しかたのないことなんだ。
いろいろなしがらみを背負うと、純粋なんてものは誰の中でも消えてしまうんだから。
だからやっぱり、もうあの頃は二度と戻ってこない。
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