憔悴した心

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 都会に出てから数年の月日が流れた。  アルバイトをしながら歌い続ける日々。そんな努力は報われず、時計の針だけがクルクルと回って行く。  路上で弾き語りをした。小さなライブハウスで何度も演奏した。  でも、プロになる未来が見えてこない。 「頑張れよ」「応援してるぞ」と言っていた同級生が大人になって行く。  農家を継いだ。就職して主任に昇格した。結婚して子供が産まれた……俺だけが取り残された気がして、眠れない日々が続いた。  チャンスはあったが、活かせなかった自分が許せない。あの日の誓いが、俺の中で重く圧し掛かる。  ちっぽけなプライドが邪魔をして、進む事も退く事も出来ずに身動きが取れなくなっていた。
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