第一幕 星降る夜に

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「お前さー……」  一時はずいぶん距離を縮めたようにも思えたが……相変わらず免疫無いというか慣れないというか。  どこか残念な思いを胸に、一貴はちょっと苦笑した。  気配を察した零が、増々赤くなって怒ったように後ずさる。 「待て、待て。危ないから」  顔を隠したままの右腕を掴んで引き止めると、零の肩が、びく、と小さく跳ねた。 「あれ、お前」  ふと、あることに気がついて、一貴は辺りを見回した。  ぶつかった時に落としたのか、彼女のトレードマークとも言えるやや大振りの黒縁(くろぶち)眼鏡が無くなっている。  だから執拗に顔を隠すのか。合点がいって、一貴はため息をついた。  零は裸眼では何も見えない。いや、見えすぎる……。  視界を守るはずの眼鏡を失ってなお、「困った」とも「拾って」とも言わない不器用な子どもに歯がゆさを感じながら、一貴は足下で踏み潰される危機に瀕していた眼鏡を見つけると、それを拾い上げた。
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