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私も、気が付けば青年に戻っていた。
夢と希望に溢れていた頃の私だ。
私は妻にーー恋人に微笑みかけた。
「小百合さん」
呼びかけると、彼女は恥ずかしそうに小さく笑う。
名前の通り、淑やかで美しい、白百合の花のような女性だった。
「私が産まれた時、庭の百合が綺麗に咲いていたんですって」
「だから小百合、か。・・・・・・君にぴったりだと思う」
照れながら告げると、彼女は嬉しそうに笑った。
百合が薫る季節だった。
彼女が微笑みながらささやく。
「約束、忘れないで下さいね」
「約束?」
なんだっけーーと、言い掛けたとたん、私の視界は真っ暗になり。
再び気がついた時には、あの電車の中にいた。
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