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がたん、ごととん。
私はまた電車の中で思い出にふけっていた。窓の向こうは暗く、鏡のように窓に自分の顔が映っている。
皺のきざまれた顔、真っ白の髪。
そう、もう老人だ。
着ている物もスーツではない。
「座ったらどうですか」
青年に声を掛けられたが、首を振って断った。
「まだ用事が残っているのでね。それが終わってからにするよ」
「そうですか」
青年はうなずき、窓の外を見る。
私も彼に倣ってそうした。
すぐに電車は止まり、今度は私だけが電車を降りた。
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